古典技法とは

古典技法(絵付け技法)

古典技法はステンドグラス発祥の西洋で生まれた伝統的な技法です。
ステンドの語源となる stained=絵付け が施された技法です。
9世紀頃からはじまり、実在する最古のステンドは11世紀頃の物です。

ステンドグラスは、イエス様を描く目的で作られ、
聖書は文字が読めない人の為の 紙芝居のような役割をしています。
教会で神父さまが「あのステンドをご覧なさい、イエス様はこうおっしゃいました」 と
説明したときに、絵を見ながら聖書の内容を知ることができるためです。

日本では19世紀にティファニーが考案したテープ技法が主流ですが、
世界的には太い鉛で組む技法が主流です。
厳格な定義によると "絵がないものはステンドグラスとは呼べない“ そうです。


1 原画を描く 
絵:仮面舞踏会に出かける貴婦人

絵:仮面舞踏会に出かける貴婦人

作品の良し悪しは原画で決まる。とも言われる大切な作業です。
この原画をもとに忠実に模写を行います。

絵付けはガラスの表、裏の両面作業になりますので
自分の描いた絵は頭に入っているので作業がしやすいです。

2 型紙づくり 

型紙は一つの作品で2枚必要です。
1枚はカットして使うもの、もう一つはカットしたガラスを置いて全体のイメージを見るものです

3 ガラス選び 

ガラスは中世からの方法で作られたアンティークガラスを使用します。
アンティークガラスの特徴は 圧倒的な透明感と絶妙な中間色が多いことです。
その透明感だからこそ 絵付けが生き、”光で描く” と言われます。
絵付をつけることで光の量を調整します。

4 ガラスカット 

型紙にあわせガラスをカット。

5 腐食 
2層の黄色だけを抜いたガラス

2層の黄色だけを抜いたガラス


カットしたガラスをフッ化水素などで下処理する工程が入る時があります。
色が層になっているフラッシュガラスを利用することにより、より味わい深い表現が可能になります。

6 顔料づくり 
6 顔料づくり 
チョコレートならよかったのにね

チョコレートならよかったのにね

古典ではグリザイユ(ガラスと金属の粉)を顔料に使用します。
ぐーるぐる、ぐーるぐると、優しく、泡立てないように何時間も練ります。
ホントに地味な作業
酢溶き顔料は3時間〜8時間 or more.....練れば練るほど筆が走るよ。
顔料の種類は少ないので、調合したりガラス自体の色との組み合わせも考慮します。

 7 線描き⇒  焼成

1回目の絵付けは酢溶きの顔料。
グリザイユ(顔料)の焼成温度は600度前後。
ガラスが割れないよう、ゆっくり熱をくわえ、ゆっくり冷まします

 7 線描き⇒  焼成
 7 線描き⇒  焼成
8 古び、陰影つけ
顔料を全体に伸ばし

顔料を全体に伸ばし

筆ではがす

筆ではがす

8 古び、陰影つけ
8 古び、陰影つけ

絵付けでは描いて、焼成、描いて、焼成の工程が繰り返しが行われます。
一度に濃い色を付けられないので、薄い色で何回も描き重ね陰影を付けます。

顔料をガラス全体に均一に伸ばす⇒乾かす⇒筆で残したい顔料以外を剥がしとる⇒焼成
また顔料を塗るみ⇒乾かず⇒剥がす

これが、なかなか根気がいりまして、、、描いている猫に向き合う時間も長く、
原画で名前がなかった子にもこの工程で名前がついちゃうわけです。
「かわいくなろうね〜」と声もかけちゃったりして。

9 シルバーステイン ・ エマイユ
シルバーステイン(写真は黄色)

シルバーステイン(写真は黄色)

9 シルバーステイン ・ エマイユ
エマイユ

エマイユ

色をいれます。
顔料により焼成温度が違うので 温度の高いものから低い順に入れます。

10 組み
10 組み
10 組み
10 組み
組み間違えに注意

組み間違えに注意

溝のついた鉛の棒で組み、仕上がり寸法どおりにできたらハンダつけ

11 パテ詰め
11 パテ詰め
11 パテ詰め

パテをガラスの隙間に入れます

12 仕上げ
12 仕上げ
12 仕上げ

石灰や木屑で汚れ、余分な油をとり綺麗にします。

はい、完成!

  作品タイトル: 仮面舞踏会に出かけるフィレンツェの貴婦人